『坊っちゃん』で語る学校のいま・むかし

夏目漱石の『坊っちゃん』は、明治時代の学校を正確に描写している。この姿と平成のいまを対比して、学校・教育を見つめ直していこうと思う。

閑話休題 スペイン周遊

 日本がまだ冬の季節だった2月から3月初め、スペイン東部から南部をちょっとばかり周遊してきました。ちょうど、東京の4月くらいの季節感だったでしょうか。ラテンの太陽は、もうまぶしいくらいでした。

1、バルセロナ

 地中海側に面した大都市バルセロナ。オリンピック、ネイマールの所属する「FCバルセロナ」、少し前に話題になった「独立運動」で関心を持っている人もいるかもしれません。

 結局、スペインからの「独立」は、住民投票では否決されました。しかし、街は「俺たちはカタルーニャ人」という雰囲気が残っていて、随所にカタルーニャが見られます。

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  また、ご存知「サグラダ・ファミリア」はこの街にあります。建築家ガウディがやり残した「大工作」は、いまでも続いていて、ガイドさんの話だと、2026年に完成の予定だそうです。私には、どうみても無理としか思えませんでしたが。

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 この写真の「塔」は、現在8本あります。あと10本が未完成なのだと広報していました。各塔は、それぞれ「イエス、マリア、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ、12使徒」を表していて、合計18本になるというのが定説です(だから、サグラダ(Saint)=聖・ファミリア(Family)家族 → 聖家族教会と言う)。あと10本、本当に10年後に完成するのでしょうか。鉄筋コンクリート製にする工法に変えたから大丈夫だそうですが、工事関係者が、昼休み(シエスタ)に酒を飲むのを控えていく必要があるように思いますが。(異文化に口出し無用ですね)

 内部もまた、「荘厳にして独創的」の言葉がピッタリの構造です。

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 光の取り入れ方がうまい、とヨーロッパの教会を訪れると思います。日本の寺院のように、蝋燭だけの明かりで仏の深遠さを演出するのとは違い、そこに立つ人に光が降り注ぐようになっていると感じます。神とつながっている、という心を演出しているのでしょうか?

 完成するという10年後、また訪れられるのかなあ。腰痛が・・・

2、ラ・マンチャ

 バルセロナから地中海沿いを南下すると、バレンシア。さらに南に下って、やや内陸に入っていくと「ラ・マンチャ地方」です。「ラ・マンチャの男」なんて聞いて、松本幸四郎を思い浮かべるのは、人生のベテランの人でしょう。もちろん、セルバンテスの「ドン・キホーテ」をミュージカルにしたもの。

 この騎士キホーテさん、物語を読みすぎて妄想に耽ってしまうのでした。騎士道を貫く正義のために、サンチョ・パンサを引きつれ、ロシナンテという馬にまたがり遍歴の旅にでる物語。そのなかに、妄想のすえに風車に突撃をかけるシーンがありました。それが、下にある写真の白い風車ですね。(もちろん観光用)

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   ちなみに、ディスカウントストアーの「ドンキホーテ」。この社名は、巨大な風車に突撃したキホーテさんと同じように、大手の販売業者に果敢に立ち向かっていこうとの会社の思いが込められているのだそうです。これが「妄想」でなければいいけど。

 ただし、多くの人が略称で「ドンキ、ドンキ」と言いますが、これは意味的にはダメです。「ドン」は騎士とか貴族とかにつけるもので、名前は「キホーテ」なのですから。日本語で言えば、「征夷大将軍源頼朝」を「将軍頼、将軍頼」って呼んでいるようなものです。誰だか分からん????

 

 この「ラ・マンチャ地方」をバスで走っていると、次のような写真の風景が延々と続きます。空と畑(牧草地)しかない風景です。地平線の見える北海道のようですね。

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 そして、もうひとつが、スペインが世界最大の収穫量を誇る「オリーブ」の畑の風景です(下の写真。これ全部オリーブの木です)。2時間走っても、3時間走っても、バスの窓外がこの「オリーブ」ばかり。いくら最初は「ダイナミックだ!」と感心しても、あまりにも変わらない車窓風景に、「いい加減にしろ、オリーブ!!」とか、「こんなに穫れるんなら、もっと安くしろ、オリーブオイル!!」と叫んでしまいたくなるのです。

 こういう景色を眺めていると、フランスもイタリアも含めて、ヨーロッパって農業国ばかりだなと思います。

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3、グラナダ

 さらに南下していくと、飽き飽きしていたオリーブ畑に変わって、シェラネバダ山脈が見えてきました。ヨーロッパでは、この山より南にはスキー場がないそうなので、格好のスキーリゾート地なわけです。2月末だったので、泊まったホテルにもスキーヤーがかなりいました。

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  この山脈の麓がグラナダ。かの「アルハンブラ宮殿」がある街です。歴史的には、イスラム教勢力に征服されていたスペインで、そのイスラム教勢力が最後の砦にしていた地だと言っていいでしょうか。世界史を覚えていますか?「レ・コンキスタ」。

 よく「国土回復運動」とか訳される用語ですね。広大な支配地を持ったイスラム教勢力を、キリスト教勢力がヨーロッパから追放していく戦争です。「レ」は英語のre=再。「コンキスタ」は英語のconquer=征服だから、再征服運動・国土回復運動と訳しているんですね。キリスト教徒による「リベンジ」です。

 グラナダは、さっきも書いたように、その「レ・コンキスタ」の最後の地になります。そこにあるのが、イスラム教勢力が築いた「アルハンブラ宮殿」なのです。今回、スペインに行って最も訪れたかった場所でもあります。

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 美しい宮殿、形式美の最たるもの。左右対称とモザイク模様が入り交じる宮殿。水と花を上手にあしらって、心安らかにさせてくれる。

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 なんだか、ナルシソ・イエペスの「アルハンブラの想い出」というギター曲が聞こえてくるような世界でした。震えるような「トレモノ」というギターテクニックを駆使して演奏される、本当に素敵な曲です。うん?そんな人、そんな曲は知らないって。映画『禁じられた遊び』の、あのギター名曲を弾いていた人ですよ。なに?もっと知らない?ユーチューブか何かで検索して、聴いてみてください。絶対に「震え」ます。

 

4、ミハス

 また地中海側にでます。実に暖かい。

 このミハスという街は、説明によると日本のCMが有名にさせたと聞きました。パンフなどでは、「白い村」と書かれています。次の写真を見ていただけば、本当に「白い」のがよく分かります。

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 空の青さと地中海の深い青。そして、岡にずっと並ぶ白壁の家々。この対照で、青も白もグーンと浮き上がってくる感じがします。もちろん、地中海に面したギリシャの風景も同じです。日本で言えば、気候がちょっと違うけど、沖縄の空と海の青さと、あのシーサーが載る赤い家々の屋根との関係に似ているかもしれません。

 高台にあって、澄んだ空気があって、明媚な風光で、しかも静かな村。「天国に近い村」と言ってよさそうです。「余生はここで」と思ってしまいます。

5、トレド

 添乗員さんがこう言っていました。「スペインにたった一度しか行けないとしたら、どこの街を選びますか?と聞かれたら『トレド』と答える」と。

 スペインのなかでも、それくらい美しく歴史もある都市だということでしょう。岡(山か)の上に築かれた城郭都市なのですが、たしかに得も言われぬ風情があることは分かりました。遠景が素晴らしい。完全に「絵画」になるし、誰が撮っても「絵になる写真」を手にできそうなのです。なんて言って、下の写真は「絵」になっていますか?

 日本では、天空の城「竹田城」が注目を浴びていますが、城郭を再建して、その規模を広げて城下町を都市化したら、このトレドに近づくかもしれません。「そんな、ちっぽけな街にあらず」と、スペイン人に怒られるか?

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 そして、この街はスペイン画家「エル・ゴレコ」の出身地でもあるので、本当かどうか確信はありませんが、「生家」が残っていてミュージアムになっていました。そして、教会にはわんさかと「グレコ」の絵が置かれています。 

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 6、マドリッド

 最後は、首都「マドリッド」。

 今回は、ほとんどこの街での時間がなく、目的は「プラド美術館」と「ソフィア王妃センター」だけでした。

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           首都の中心にある「スペイン広場」

 プラド美術館は、あまりにも有名なので言うまでもないでしょうが、ゴヤ、ベラスケス、ラファエロ、エル・グレコ、ティツィアーノレンブラント・・・・・の作品の宝庫です。このうちの一作品でも日本に来れば、大騒ぎになる事は必定。たとえば、ゴヤの「裸のマハ」と「着衣のマハ」が来日したら、どうでしょう。3時間くらい列に並んで、絵の前に来たら「鑑賞は足を止めないでください!」と係員に叫ばれて、3秒ほどで通過という事態になるのでは?「足を止めない鑑賞」って、動体視力のテストじゃないんだけどね。

 それが地元に行けば、「マハ」の前に立つ人は数名。時間によっては誰もいない。だから、2枚が並んで展示されている「裸」と「着衣」が、10㎝の距離まで近づき、「足を止めて鑑賞」です。でも、たくさんの絵画を鑑賞しすぎて、画家名と作品名がほとんど一致しなくなりました。

 マドリッドには、もうひとつの目玉となる絵画があるのです。プラド美術館から歩いて行ける「ソフィア王妃センター」という所にです。それは、下の写真。

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  そうです、パブロ・ピカソの「ゲルニカ」なのです。

 ご存知でしょうが、ゲルニカは街の名前。1930年代のスペイン内戦のときに、フランコ将軍に抵抗する勢力がいたゲルニカを、フランコを支援するヒトラー空爆した街ですね。

 そのときの怒りを、ピカソはこの絵にぶつけたという傑作です。体を破壊される民衆だけでなく、馬や牛も描くことで、その「無差別性」を強調したのでしょうか?大きな絵であるだけに、白黒にもかかわらず強烈な迫力でした。

 日本の作品との比較で言えば、丸木夫妻による原爆絵画を思い起こす人も多いかもしれません。

 

 スペインは経済的にたいへんな時期にあります。これもガイドさんが言っていましたが、「プラド美術館の絵を売り払えば何とかなるんじゃない?」って。でも、そんな程度のことで経済回復できるような状況じゃないくらい深刻なのだそうです。

 日本人みたいに、昼休みはワインを飲むのもやめて、時間も45分にして、もうちょっと懸命に働いたらGDPも上がるんじゃないかと思いますが、それじゃあ、スペインのこれまでの文化も歴史も創られてはこなかったんでしょうね。「文化は、豊かな余裕からしか生まれません」です、きっと。

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